| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-133 (Poster presentation)

茶園からのN2O放出は減らせるか?-石灰窒素の硝化、脱窒、N2O放出に与える影響-

*山本昭範,秋山博子(農環研),直川拓司(電気化学工業),宮崎 保博,本多 勇介,佐野 行正(埼玉茶業研),中島 泰弘,八木 一行(農環研)

茶園の面積は日本の農耕地の約1%であるが、茶園からのN2O放出は農耕地からのN2O放出量の約16%を占めている。そのため、茶園ではN2O放出の削減が重要な課題である。石灰窒素は、農薬効果と肥料効果を併せ持つ化学資材である。石灰窒素の分解過程では、硝化抑制剤として利用されるジシアンジアミドが生成されるため、石灰窒素は茶園からのN2O放出を削減することができると考えられる。そこで、埼玉県入間市の茶園において、石灰窒素の施用がN2Oの生成や放出に与える影響の解明を行った。

圃場試験では、やぶきたが栽培されている茶園に①慣行肥料区(化成・有機配合肥料)、②石灰窒素区(施用窒素の約53%を石灰窒素で施用)の2処理を4反復で設置した。窒素施用量は埼玉県栽培基準(450 kg N ha-1 y-1)に従った。窒素施肥は1年間に3回(春施肥、秋施肥は年間施用量の4割、夏施肥は年間施用量の2割)畝間土壌にのみに行った。N2O放出や環境要因の測定は、畝間土壌と樹幹下土壌の両方の場所で年間を通して行った。その結果、石灰窒素区の畝間土壌における硝化活性、脱窒速度、N2O放出は慣行肥料区に比べて明らかに減少した。一方、樹幹下土壌からのN2O放出は試験区間で顕著な差は見られなかった。また、アセチレンブロック法とN2Oアイソトポマー比による解析の結果、畝間土壌では土壌水分が低いにも関わらず脱窒が主なN2O生成プロセスであることが明らかになった。慣行肥料区に対する石灰窒素区の総N2O放出量(366日間)は36.0%減少(P < 0.05)であった。本研究の結果から、石灰窒素は、硝化と脱窒の両方を抑制することで茶園からのN2O放出を削減できると考えられた。


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