| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-136 (Poster presentation)
福島第一原発事故で降下した放射性セシウム(Cs)は森林生態系内のリター層および土壌表層に主に蓄積され、それらは樹木の経根吸収に伴い再び植物体へ移行し、その吸収能力は樹種で違いがあることが報告されている。一方、コナラは重要なしいたけ原木であるが、ほだ木からしいたけ子実体へCs移行が明らかとなり、Cs汚染されない原木が求められている。演者らの鈴木はフェロシアン化鉄「プルシアンブルー(PB)」施用がほだ木から子実体へのCs移行を低減させる新たな技術を開発した。そこで、演者らは今後森林内の物質循環、特に土壌から植物体へのCs移行の低減化を図るため、PB施用が土壌からコナラ樹体へのCs移行に及ぼす影響を検討した。
試験にはワグネルポット(1/5000a)を用い、土壌1L当たり PB0.1g混合、PB1.0g混合、PB1.0g表面散布および無施用(対照)の4水準を設定し、Csを含む土壌へCsを含まない2年生コナラ苗を移植した後、1生育期間、灌水等に伴うCsの系外流出がない閉鎖系で実験を行った。
その結果、1生育期間後のコナラ苗の苗高、根元径および部位別重量(根、幹・枝、葉)には水準間に有意差はなく、PB施用がコナラ苗の成長に及ぼす短期的な影響は認められなかった。一方、根系を含むコナラ樹体全体に含まれるCs濃度はPB施用区が対照区より低く、土壌からコナラ苗へのCs移行係数は、PB施用区が0.11~0.15で対照区より有意に低く、PB施用がCs移行の低減に有効であることが認められた。