| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-137 (Poster presentation)

火山灰土においてミミズが炭素動態に及ぼす影響

*金田哲(農環研),藤井一至(森林総研JSPS),米村正一郎(農環研),和穎朗太(農環研),大久保慎二(自然農法センター),児玉直美(農環研)

ミミズは、一般に、有機物を摂食し分解することで土壌炭素の無機化を促進することが知られている。その一方で、ミミズによる団粒形成は団粒内の有機物分解を遅延させる事も報告されている。ミミズの存在は土壌炭素動態に対し、有機物分解の促進と遅延という相反する2つの効果を有している。しかし、ミミズが土壌炭素動態に及ぼす影響およびそのメカニズムに関して不明な点が多いのが現状である。そこで、広く日本に分布するサクラミミズを地中生息性ミミズのモデル生物とし、ミミズの分解促進効果と遅延効果を、ミミズ投入土壌の培養期間中にミミズ除去処理を行うことで評価した。処理区は、実験開始後7日間のみミミズ1個体を土で培養しその後除去する区と、ミミズを投入しない土のみの区の2つを設けた。土は、1mm以下の火山灰土25g(乾土)を培養瓶に詰め、最大容水量の60%に調整した。実験は20℃で行った。定期的に土壌呼吸を測定することでミミズが土壌呼吸速度に及ぼす効果を評価した。ミミズ投入時を実験開始日とし、ミミズが土中にいた実験開始7日後までは、ミミズ処理により土壌呼吸速度が増加した。ミミズ除去後ミミズ処理による土壌呼吸増加の効果が時間とともに低下した。沖積土を用いた同様の試験では、100日以降ミミズ投入処理によって土壌呼吸速度が低下したが、火山灰土では180日間培養においても土壌呼吸速度は統計的に有意には低下しなかった。火山灰土と非火山灰土(沖積土)では、活性アルミニウム含量や団粒構造などが異なることから、土壌種によりミミズが炭素動態に及ぼす影響が異なる可能性があると考えられた。


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