| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-140 (Poster presentation)
土壌に供給された有機物は、主に微生物による分解(代謝)作用を受けると同時に、化学的吸着や物理的隔離といった土壌団粒や鉱物粒子との相互作用を繰り返す。これにより、サイズや化学的性質の異なる有機・無機集合体が形成されるため、土壌有機物の大半は1.8 g cm-3以上の中~高比重の土壌粒子(団粒)として蓄積すると推測されている。しかし、供給された有機物が中~高比重画分として蓄積する速度は明らかではない。比重分画法と安定同位体トレーサー法を組み合わせることで、比重の異なる土壌団粒への有機物の蓄積割合を定量評価することを目的とした。
日本とインドネシアの農耕地土壌に13C標識グルコースと13C, 15N標識グルタミン酸をそれぞれ添加し、276日間静置培養した。経時的に低比重(<1.8 g cm-3)、中比重、高比重画分に分画後、各画分の回収量、炭素・窒素同位体比、全炭素・全窒素濃度、CO2放出量を測定した。
添加量に対して9か月間でCO2として放出された割合はグルコース・グルタミン酸それぞれ65-69%と80-81%であり、いずれの土壌においてもグルタミン酸がより多く無機化された。低比重画分の炭素・窒素割合は、いずれの添加区においても時間と共に減少した。中~高比重画分の炭素・窒素割合は培養2週間後には17-32%と高く、いずれの土壌においても微生物由来の有機物は速やかに土壌粒子と結合することがわかった。中比重画分の炭素・窒素割合はインドネシアより日本の土壌で高く、時間と共に減少した。一方、高比重画分の炭素・窒素割合は日本よりインドネシアの土壌で高かった。高比重画分の炭素・窒素割合は4か月目以降、減少しなかったことから、添加した有機物のうち2-7%は高比重画分として安定化することがわかった。