| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB3-142 (Poster presentation)
湿原は,陸域と水域の境界に位置する移行帯であり,水文・水質環境の調整,また物質循環の制御など様々な機能を持つといわれている.これらの機能の多くは,湿原土壌中の微生物が担っているとされるが,多くの研究は土壌表層について検討しているに過ぎない.湿原土壌は未分解の有機物が厚く堆積しており,その地下水位は高く,湿原の機能を検討するには土壌深層を含めて検討する必要がある.本研究では,釧路湿原の土壌を約150cmまで回収し,微生物機能として全微生物活性,有機物分解,リン酸生成,脱窒に関する酵素活性の測定を行い,鉛直的な微生物機能について検討を行った.また,これらの酵素活性と環境因子の重回帰分析を行い,微生物機能の制御因子についても検討した.
土壌の採泥は,2008年11月(冬期)と2009年8月(夏期)に行った.土壌を5~6層に取り分け,全微生物活性としてFDA加水分解酵素,有機物分解としてβ-グルコシダーゼおよびキシロシダーゼ,リン酸生成としてフォスフォターゼの酵素活性を測定した.脱窒の酵素活性はアセチレン阻害法で測定を行った.
全微生物活性は表層と深層で高く,湿原土壌は全体的に高い微生物活性を持っていることが解った.土壌に表層において有機物分解,リン酸生成および脱窒活性が高かった.リン酸生成および脱窒活性は冬期より夏期に高く,温度や水生植物の影響が考えられた.土壌深層においては,高い有機物分解活性が観られた.一方,リン酸生成および脱窒活性は低かった.深層では有機物分解は活発に進行するが,リンや窒素などの栄養塩動態に関する活性は低いことが示された.重回帰分析の結果から,有機物分解と脱窒は,土壌および間隙水の化学的性質に関与していることが示された.