| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-146 (Poster presentation)

青海・チベット草原の炭素循環に及ぼす放牧の影響評価

唐艶鴻(国環研・生物)

青海チベット草原は250万平方キロ以上の面積を有し、伝統的に遊牧を行ってきた。しかし、過去50年以上、特に1980年代から家畜の放牧量や家畜の種類も大きく変化した。また、遊牧民の集中居住が進み、草原局地の退化、「砂漠化」も起こっている。一方、2000年ごろ以後から内モンゴルやチベット高原では、草原植生回復の政策が実施され、放牧量の増加がある程度で抑制されている。さらに、この地域は標高が高く、殆どのところが標高1500mを超え、気候変動、特に気温上昇の影響も顕著とされている。このような急速な人為的自然的環境変化は、この広大な草原の炭素循環にどのような影響を与えているかは興味深い。今回の発表は、過去十数年において、この地域の草原生態系における炭素循環に及ぼす環境変化、特に家畜放牧の影響に関する研究を整理し、纏めてみた。その結果を報告すると共に、最近の衛星画像解析からの結果も紹介する。持続的な放牧の増加によって、局地の草原植生の種組成が大きく変わっただけではなく、土壌炭素の放出量も著しく変化することが観測されている。特に、過度な放牧は、モンゴル高原の「砂漠化」または青海草原の「黒土灘」の形成によって、土壌炭素の分解が加速されることが注目される。一方、草原の純生産量は、過去の数十年において、内モンゴル(モンゴルも)草原では低下しているようであるが、青海・チベット高原ではむしろ増加の傾向にある。これらの変化に及ぼす影響要因について議論する。


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