| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-150 (Poster presentation)

河口域-海草場における堆積物態炭素の起源推定

*渡辺謙太(港空研),門谷茂(北大),桑江朝比呂(港空研)

海洋生態系によって隔離・貯留される炭素「ブルーカーボン」は人為起源炭素の重要なシンクとして注目されている.ブルーカーボンの大部分は河口域や海草場などの浅海域に堆積するとされており,全球規模の炭素循環においても重要性が指摘されている.浅海域での炭素隔離プロセスにおいて重要とされているのが,堆積物への有機態炭素の長期にわたる埋没である.しかし,浅海域の堆積物には様々な起源を持つ有機物が混在しており,定量的に寄与を推定する必要がある.特に河川流入によって運ばれる陸起源有機物と自生性有機物を区別し、埋没量を推定することが重要である.本研究では河口域-海草場で採取した堆積物コアの安定同位体比,元素比による有機物混合モデルを用いて,表層堆積物態炭素の定量的起源推定を行った.

調査対象となる風蓮湖は根室湾に面したラグーンである.風蓮湖は河川の流入により富栄養化しており,ラグーン面積の67%をアマモ場が占めている.本研究では塩分勾配に沿って,河口部・アマモ場・根室湾において堆積物コアを採取し,TOC,TN,クロロフィル,炭素・窒素安定同位体比を測定した.C/N比および炭素・窒素安定同位体比を指標として,3端成分(陸起源OM,植物プランクトン起源OM,アマモ起源OM)の有機物混合モデルを構築し,寄与率推定を行った.

陸起源有機物の寄与は河口部で約60-80%と高く,アマモ場内でも約20-50%であった.アマモ場では植物プランクトン,アマモがともに約20-40%と優占的で,ラグーン内に堆積する主な有機物であることが推定された.根室湾では植物プランクトンが大部分を占め,陸起源有機物やアマモの寄与は小さかった.以上の結果から堆積物に埋没する有機物ソースの構成比は場所ごとに大きく異なっており,河川流入や生物生産量が影響していると考えられる.


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