| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


シンポジウム S07-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

ランビル林冠節足動物研究の概要

市岡孝朗(京大・人環)

熱帯雨林は、未知なる生物がひしめく生物多様性の宝庫であると言われてきた。実際、現在においても、続々と未記載種が発見され、珍奇な形態・行動・生活史・種間関係が次々に明らかになるなど、熱帯雨林の生物多様性は依然としてその奥底がはっきりとは見えない状況が続いている。どのような生物がどれくらいそこにいて、何を食べ、何に食べられ、どのような生物と相利関係にあるのか。数が多くて研究しやすい生物、あまりに風変わりであるために研究者の興味を強烈に引きつけた生物、産業上価値のある生物など、ごく一部の生物を除き、熱帯雨林に生息する生物の大部分について、基本的な生物学的特性や生態はほとんど何もわかっていない。特に、熱帯雨林の空間構造を特徴づける巨大な林冠は接近することが困難なために、そこに生息する生物の生態は多くの謎に包まれている。

演者は、ボルネオ島にあるランビルヒルズ国立公園において、節足動物群集の生態をつぶさに明らかにすべく1994年以来各種の調査をおこなってきた。調査地に広がる保存状態のよい熱帯雨林には、林冠の生物と生態系を観測・調査するために、観測塔(タワー)、空中回廊(ウォークウェイ)、林冠クレーンなどの大規模な施設が設けられているほか、林冠を構成する主要樹木の分布や開花・結実フェノロジーなどの情報が蓄積されている。講演では、調査地の研究用施設の概要を紹介するとともに、他の5人の演者による研究成果と関連させながら、調査地において大勢の研究者によって過去20年間になされた節足動物の生態に関する研究成果の全容をかいつまんで報告する。そして、熱帯雨林の多様な生物、とりわけ、熱帯雨林の生物多様性の根幹をなす節足動物を対象とした生態研究の今後の展開を提示する。


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