| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


シンポジウム S07-6 (Lecture in Symposium/Workshop)

兵藤不二夫(岡大・RCIS)

安定同位体が解き明かす熱帯雨林における節足動物の食性

熱帯雨林は、地球上で最も高い生物多様性を持つ生態系の一つである。その生物多様性の推定について多くの研究がなされている一方で、種多様性の大部分を占める節足動物の食性についての知見は十分ではない。一つの理由として、食性を調べるための行動観察や、多くの生物が土壌や林冠に生息するため、その直接観察が困難なためである。近年、炭素窒素同位体が動物の食性の解析に用いられている。これは動物の体の同位体組成が食物の同位体組成を反映し、その炭素同位体比は食物より1‰、窒素同位体比は食物より約3‰高くなることがわかっているためである。本発表では、演者が2004年から始めた多くの共同研究者とともに行ってきた研究を元にランビルヒルズ国立公園の熱帯雨林における同位体の分布や、そこから明らかになってきた節足動物の食性について報告する。その中で、窒素同位体比が動物の栄養段階とともに上昇することや、炭素同位体比からわかってきた森林の鉛直方向にそった節足動物の資源利用、捕食者に対する分解者の食物源としての重要性について議論する。特に、熱帯雨林で最も現存量の大きな動物であるシロアリ目やハチ目(カリバチ、ハナバチ、アリ)についての同位体分析から、これら動物が持つ多様な食性について報告する。さらに、直接の行動観察の難しい樹上性アリの食性や新しい手法である放射性炭素を用いて最近得られたデータを報告する予定である。


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