| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


シンポジウム S14-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

オオクチバスを対象とした防除手法の開発と防除体制の強化

中井克樹(琵琶湖博物館)

侵略的外来魚・オオクチバスの効果的な防除手法は、生態的影響を低減させるための個体数の減少をめざした「捕獲」と、個体数の増加を防ぐ「繁殖抑制」に大別される。「捕獲」を目的とした手法は伝統的漁法の利用やその改良を中心とし、加えて近年は電気ショッカーボートが注目されている。一方、「繁殖抑制」のための手法は、オオクチバスの育仔習性を利用し、自然産卵床の破壊や稚魚群の捕獲が行われてきたが、「人工産卵床」と呼ばれる人為的にオオクチバスの産卵床形成を誘導する装置(以下、「人工産卵装置」という)が開発され、産卵行動を人為的に設置した場所に誘導することにより効果的な繁殖抑制が可能となる見通しが立ってきた。

しかし、底面に砂利を敷いて水底に設置する従来型の「直置き式」装置に産卵が誘導されない水域や、水底が急傾斜のため装置の設置が困難な水域があるなどの制約があるため、装置の汎用性を高めるため、演者らは新たに「吊り下げ式」人工産卵装置の改良に取り組んできた。その過程で、大規模な水位変動や低い透明度などの物理的環境条件や、オオクチバスの卵・仔稚魚にとっての「天敵」ブルーギルの高密度生息という状況に対応すべく、岸から沖合いに離して設置した装置に誘導する方法や、装置に衝立を付ける仕様を考案し、水域ごとの制約に応じて装置の汎用性を高めることに成功しつつある。また、水域単位で装置を設置し、自然繁殖も同時モニタリングすることで、装置への産卵床形成が自然繁殖よりも高頻度で誘導され、装置の適切な設置が繁殖抑止に有効であることが示唆された。

防除体制の確立については、オオクチバス等の外来魚は防除活動に多様な主体が関与する一方、活動への反対勢力が存在するという特殊性に考慮し、駆除効果が不十分なままの事例や、反対勢力による妨害される事例、既存の法制度の制約に直面する事例などを参考に、実施・運営上の課題について総括した。


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