| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
シンポジウム S14-5 (Lecture in Symposium/Workshop)
アライグマ対策は全国各地で展開されているが、多くの事業が高密度状況になってからの農業被害低減を目的とした対症療法的な捕獲に終始しており、侵入状況に応じた適切な対策が講じられてはいないのが現状である。
そこで、効果的・効率的な防除を展開するために、各地の侵入状況や対策効果についての情報共有化を図り、かつ外来種対策において最も効果的な侵入初期の低密度状況、及び対策終盤の低密度状況において効果的な防除技術の開発を行うとともに、在来生態系の保全を目的としたアライグマ侵入初期地域における防除プロセスの確立を試みた。
全国の自治体の対策担当者へのアンケートでは効果的な対策情報共有への要望は高く、現在対策関係者間でのアライグマ情報共有ネットワークの構築を進めている。また、低密度状況で効果的な探索・捕獲技術として、学習理論に基づいたアライグマ探索犬の育成とアライグマの営巣習性を応用した巣箱型ワナの開発を行っており、探索犬ではアライグマの臭いのみに反応して告知する行動形成に成功し、巣箱型ワナにおいても誘引餌を用いずともアライグマが捕獲可能であることを確認できた。これらの技術導入によって、これまで対応できなかった低密度状況での対策構築が可能となり、侵入初期から対策終盤までの生息状況に合わせた防除技術の選択が可能となった。
さらに、アライグマ侵入初期の大分市をモデルケースとして、ウミガメへの食害防止等の在来種保全を目的に、地元環境NPOの協力のもとに自動撮影カメラによる繁殖コアエリアの確認と、行政・地域住民による捕獲作業の実施によって効率的に個体数を低く抑えることに成功し、この地域に探索犬と巣箱型ワナを投入してアライグマの地域的な根絶達成を目指している。