| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


シンポジウム S14-6 (Lecture in Symposium/Workshop)

防除実践のためのモデル解析

小池文人(横浜国大)

数理モデルは外来生物防除のさまざまな場面で利用可能であり,さまざまな場面で多様なモデルが断片的に利用されてきた.ここでは防除事業全体の進行管理サイクルを概観し,その中でどの部分にどのようなモデルを利用すべきなのかを考えたい.

これまで数理モデルは一部の専門的な数理生態学研究者によって利用されてきたイメージがあるが,マクロ生物学においては,むしろ普通の野外研究者が普通の道具として利用してゆくことが望ましい.そのためには生物学には数学は必要ない,などの高校での教育における固定観念を取り除いて行く必要もある.

マネジメントシステムでは,状況把握や計画,実行,結果の見直しをサイクルとして行うことが多い.企業などでは多くのメンバーがマネジメントサイクルの過程を共有できるように,わかりやすいスローガンが掲げられる.定性的なアプローチとしては伝統的なPDCA (plan–do–check–act)などがあり,単純な目標を定量的に表現できる場合にはDMAIC(define the system, measure, analyze, improve, control the process)などのスローガンもある.外来生物対策の事業においても,社会との関係性を含めて事業の全体像を把握し,現状をモニタリングして見直しながら事業を進めることになるが,事業の特性を見極めて適切なマネジメントサイクルを構築してゆく必要がある.

ここでは生態系の回復を最終目標とし,それに至るための外来生物の個体群管理を,北海道のアライグマや奄美大島と沖縄のマングース,小笠原のグリーンアノール,琵琶湖のブラックバス,北海道のオオマルハナバチと東京のアルゼンチンアリ,などを対象に,より簡単な統計モデルから,複雑なプロセスを再現したシミュレーションまで,さまざまなモデルを総合的に利用しながら事業を推進する状況について紹介する.


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