| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


シンポジウム S14-7 (Lecture in Symposium/Workshop)

外来種の環境影響評価と防除の優先順位決定

*森口紗千子(国立環境研),岡本卓(京都大),五箇公一(国立環境研)

外来種は生物多様性を減少させる脅威であると共に,経済的損失や健康被害など様々な影響を及ぼす.生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の愛知目標や環境省の生物多様性国家戦略では,防除の優先順位付けをした上での外来種の根絶および制御が目標として掲げられている.本発表では外来生物法により特定外来生物と要注意外来生物に指定されている全ての動物種163種を対象として,環境影響と防除コストを評価し,両者の兼ね合いより外来種防除の優先順位を決定する.さらに評価を決定した文献の種類により重みづけした誤差範囲を両指数に付与して信頼性を評価することで,各指数の不確実性を検討した.

環境影響評価では,自然環境への影響,人間社会への影響,侵略性に関わる形質や生態的特性,侵入地域の特徴の計26項目について各種を評価した.全ての項目について文献情報を収集し,文献の質により重みづけした誤差範囲を付与した.防除コストは,侵入分布域の特徴や防除手法の有無など9項目を評価し,侵入都道府県の割合との積で表した.防除手法に関する3項目については環境影響評価と同様に文献の種類で重みづけした誤差範囲を付与した.

環境影響および防除コストの大きさに基づき,1)環境影響が甚大ではあるが,広域に分布し防除コストも非常に大きいため個体群管理を目標とした長期的防除が妥当と考えられる種,2)環境影響は大きいが,分布域も限られており防除コストが小さいと判定されることから根絶目的の短期的防除が可能と考えられる種,3)環境影響は小さいものの,広域分布などのため防除コストが大きいと考えられる種,4)環境影響は大きいと予測されるが,情報が不足しており評価の誤差が大きいと考えられる種を明らかにし,防除の優先順位をどのように決定すべきかを議論する.


日本生態学会