| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


企画集会 T12-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

オオクチバス等の外来魚モニタリングにおける環境DNA技術の有用性の検証-調査手法の違いによる結果の比較を通して―

*高原輝彦(広島大・院総科), 源利文(神戸大・院発達), 土居秀幸(広島大・サステナ), 木塚俊和(国環研), 満尾世志人(龍谷大・理工), 角田裕志(岐阜大・野生動物セ), 高村典子(国環研)

我々はこれまでに、自然環境中に生息する魚類の在/不在や生息量(重さや数)を、わずか数リットルの水に溶け込むDNA断片(環境DNA)を定量PCR法などにより測定することで、簡便に評価できる手法の開発に成功した。しかし、採捕や目視などの従来の調査手法と比べて、環境DNAを用いた手法が、どのくらい効果的なのかは十分に検討されていない。そこで、オオクチバスとブルーギルの外来魚2種を対象にして、2012年7-8月にかけて兵庫県明石市周辺のため池50面において調査を行った。環境DNA手法では、各池の沖と岸の表層から採取した水サンプル各1L中の各魚種に特異的なDNA断片(mtDNAのCytbの一部)を定量PCR法により測定することで外来魚2種の在/不在を判定した。採捕調査は、熟練の研究者2名が投網とタモ網を用いて、すべての池において面積辺りの努力量が等しくなるように行われた。オオクチバスのDNAは、ため池50面のうち11面で検出され、採捕調査によって生息が確認された11面のうち8面でDNAが検出された(DNA検出率73%)。ブル—ギルのDNAは、50面のうち23面で検出され、採捕調査による生息確認済みの18面のうち14面でDNAが検出された(78%)。水サンプルの採取のみによる環境負荷の少ない環境DNA手法は、魚種の違いに関係なく、それらの生息状況をある程度正確に予測できることがわかった。今後は、各魚種の生息密度や池の大きさ、水質(PCR阻害物質の有無等)などとDNA検出率との関係を明らかすることで、環境DNAを用いた生物モニタリング手法の更なる向上が期待できると考えている。


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