| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨 ESJ61 Abstract |
企画集会 T12-3 (Lecture in Symposium/Workshop)
環境水中を漂うDNAを解析して水中の大型生物相を把握する環境DNA解析技術が近年急速に発展している。先行研究の知見をまとめると、魚類、両生類をはじめ、水中に棲息する目に見えるサイズの動物であれば、通常の捕獲や目視による手法と同程度かそれ以上の感度で分布情報が得られるようである。これまでの環境DNA手法ではマーカーとしてミトコンドリアDNAが用いられてきたが、ミトコンドリアDNAでは母系遺伝である点などいくつかの欠点がある。そこで、環境DNA解析法における新たなマーカーとして、核DNAを用いることができるかどうかを検討した。対象種としては、すでにミトコンドリアDNAの定量系が確立しているコイ(Cyprinus carpio)を選んだ。rDNA領域をターゲットとして、野外メソコスムおよび自然湖沼において核DNAの検出を試みたところ、いずれの環境水からもコイの核DNAを検出することに成功した。また、環境水中におけるrDNAのコピー数はミトコンドリアDNAのコピー数と良く相関し、さらにコピー数が100倍程度多い事がわかった。この結果は、核DNAをマーカーとすることが可能であること、環境DNA解析手法の検出感度を大幅に高める可能性があることを示している。一方で、今回利用したrDNA領域は魚類ではほとんど調べられていないため、本手法の適用にあたってはデーターベースの整備などの課題もある。本企画集会では環境DNA解析における核DNA利用のメリットやデメリット、今後の展開などについて議論したい。