| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) A1-15 (Oral presentation)

能登半島に自生するクルマユリ 現状と白山のクルマユリとの比較

*野上達也(白山自然保護センター),伊藤浩二(金沢大・地域連携推進センター),大谷基泰(石川県大)

石川県のクルマユリ(Lilium medeoloides)には、白山の亜高山帯・高山帯に分布するものと、能登半島の外浦区に分布するものがある。後者はいわゆる佐渡島などに分布するサドクルマユリ(L.medeoloides var. sadoinsulae)とされている。白山の亜高山帯・高山帯に分布するクルマユリが高茎草原やハイマツ林縁などに生育しているのに対し、サドクルマユリは、相対的に明るい場所である林床、ギャップ、林縁、伐採跡などに生育している。サドクルマユリは、環境の変化や園芸目的の採取により個体数が激減していることから、石川県では、サドクルマユリを石川県RDB絶滅危惧Ⅰ類に選定しているほか、希少野生動植物種に指定している。これまでの調査で確認された生育地点、生育個体数は、輪島市で1地点、1個体、珠洲市で5地点、44個体であった。現地での調査は、生育個体数、開花・結実状況調査を実施したほか、白山の亜高山帯・高山帯に分布するものと形態を比較した。その結果、開花個体では茎に輪生する葉の位置等に、両者で違いが見られた。また、珠洲市の最も大きな集団のある地区の住民を対象に行ったアンケート調査結果では、地主以外の住民は、サドクルマユリを全く認知しておらず、自宅での栽培も行っていないことから、現在では園芸目的での採集は、ほとんどないと思われる。かつては製塩の燃料として林が伐採されていた場所に、サドクルマユリは広範に生育していたと言われている。しかし、産業としての製塩業の衰退や薪炭林としての利用されなくなったことに加え、地区住民の高齢化が進み、林の手入れがほとんど行われなくなったことによる林床の藪化といった生育環境の悪化が、サドクルマユリの個体数減少の主な要因であると考えられる。


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