| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) A1-18 (Oral presentation)
水生生物の生息地の縮小や外来種の増加など、水辺環境における急速な生態系変化が深刻な問題となっている。これらの変化を早期発見するためには、速やかな生物分布推定法の開発が急務である。水生生物の迅速な分布推定法として、近年注目を集めているのが環境DNA技術である。水中の浮遊DNAから生息生物を迅速且つ簡便に推定するこの手法は、魚類や両生類において急速に発展しているが、水生植物における知見は未だ乏しい。特に環境DNA量が生物量によってどのように変化するかについては、本技術を応用化するにあたり重要な情報であるが、未だ明らかになっていない。そこで本研究ではトチカガミ科の沈水植物2種を用い、環境DNA量と生物量の関係を明らかにすることを目的とした。
対象としたのは、国内で地域的に絶滅が危惧されている在来種のクロモ(Hydrilla verticillata)と、要注意外来生物のオオカナダモ(Egeria densa)である。それぞれの種について、生物量を3段階にわけて水槽で10日間生育し、継時的に15mlずつ採水した。それらから環境DNAを抽出し、リアルタイムPCRで定量した。
その結果、生物量が多くなるほど環境DNA量も増加する傾向が検出された。また、生物量が少ない条件下でも、葉の脱落等によっても環境DNA量が増加しうることが示唆された。これらのことから、環境DNA量が生物量の推定に利用できる可能性が示唆された一方で、自然集団においては葉の脱落が多い時期に環境DNA量が増加するため生物量を推定するにあたり注意が必要であることが示唆された。