| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) B1-14 (Oral presentation)
熱帯地域では、保護の対象として守られている森林は全森林面積の1割程度にすぎず、残りは生産林として利用の対象となっている。熱帯生産林の多くでは、産業用丸太生産のために有用樹種の択伐が行われ、択伐により林冠が開いたところは二次林樹種が定着・優占するようになる。そのため熱帯択伐林は、二次林樹種の小径木が優占する部分と伐採の影響を受けず一次林樹種が優占する部分が混在する林となる。
インドネシア東カリマンタン州の低地林に設定された一次林樹種と二次林樹種の個体数比が大きく異なる試験地で得られたデータに、さまざまな相対成長式を適用し現存量推定値を比較した。その結果、二次林性樹種の個体数が高い場合には、樹種を区別した相対成長式を用いるか、樹種別の材比重を含む相対成長式を用いなければ、林分現存量の推定値が大きくなった。逆に、二次林樹種が優占する林分に一次林樹種の大径木が残存している場合にその個体に二次林のための相対成長式を適用すると、林分現存量推定値が大きく低下した。熱帯択伐林の現存量推定においては、一次林樹種と二次林樹種を区別すること、二次林樹種については樹種に特化したもしくは材比重を反映した相対成長式の適用が必要である。
択伐影響の評価では、伐採木および搬出路を含むように調査区を設定し、毎木調査を実施することが多い。多数の樹木種が生育し発達した構造をもつ熱帯林は、択伐前の樹種およびサイズ組成は一様ではない。また伐採対象木の分布や搬出路の位置や面積にも大きな変動がある。このような調査区による変動を把握するには、多数の調査区を設定するか大面積の調査区を設定する必要が生じるが、労力の点から現実的ではない。そのため、択伐施業地全体を対象とする現存量推定は、伐採により二次林樹種が優占する部分と伐採の影響を直接受けていない部分を区別した現存量推定と、それぞれが占める面積の把握から行うのが現実的である。