| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) B1-15 (Oral presentation)

河川溶存物質の多元素同位体比を指標とした、水系における生物の生息地情報検出手法

*陀安一郎, 由水千景, 加藤義和, 神松幸弘, 奥田昇(京大・生態研セ), 冨樫博幸, 天野洋典, 栗田豊(東北水研), 申ギチョル, 中野孝教(地球研)

生物を構成する元素は環境から取り込まれる。生態学的側面から見れば、環境中の物質の元素組成およびその同位体組成からなる環境情報を生物体が取り込むと考えられる。一方、環境科学的側面から見れば、生物体を構成する元素組成およびその同位体組成は、生息している環境を表す指標とも解釈できる。生物体への元素の取り込まれ方については、貝殻や耳石のように代謝せず履歴を記録する部位と、臓器や筋肉のように絶えず代謝を行い入れ替わっていく部位がある。取り込まれる過程を考えると、環境水と平衡状態となって取り込まれる元素と、食物から取り込まれる元素がある。

これらの元素の動態を考慮すると、生物体の元素組成およびその同位体組成は多くの情報を含んでいることになる。生態学において同位体比データはいろいろな使い方をされてきたが、本発表では、特に母岩別の特徴があり主として環境水から取り込まれる重元素の動態に着目した研究について紹介する。

本研究の目的は、水系を流れる河川水の微量元素組成およびその同位体組成を総合的に測定することにより、各水系の特徴を明らかにすることである。主たる調査は、東北地域の岩手県、宮城県にまたがる地域の河川において、2014年5月30日〜6月4日にかけて行った。本発表では、これらの結果をもとに、河川溶存物質の多元素同位体を指標とした、水系における生物の生息地情報検出手法について報告する。また、これらの研究に軽元素同位体比を用いた食物網構造データを合わせることで得られる、生態学的情報の可能性について検討する。


日本生態学会