| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) B1-17 (Oral presentation)

森林管理とエネルギー利用が里山の炭素循環に与える影響の解明~持続可能な里山の管理をめざして~

*松下華代(早稲田大・院・先進理工),友常満利,坂巻義章(早稲田大・理工総研),小泉博(早稲田大・教育)

日本では、燃料や肥料を得るために下草刈りや落ち葉搔きといった管理が行われる二次林が多く残されてきた。これは里山と呼ばれ、生物多様性保全、二酸化炭素吸収など様々な役割を果たしている。しかし、里山の人為的管理が炭素循環に与える影響については十分な研究がなされていない。本研究では、下草刈りのみを行った(UH)区、下草刈りと落ち葉搔きを行った(LR)区を設置し、放置(Um)区と比較することで里山の管理が炭素循環に与える影響について調査した。また、管理による収穫物をバイオエネルギーとして利用した場合の里山の炭素循環についても検討した。

管理の結果、植物による炭素固定量はUm区と比べて上昇もしくは同程度であるのに対し、微生物による炭素分解量は管理区で大きく減少した。炭素固定量は林冠の光合成による影響が大きいため管理による差異は小さい傾向にある。土壌からの炭素放出量は下草等の細根や土壌微生物の減少によって影響を受け減少したと考えられる。一方、バイオエネルギー利用は化石燃料による炭素放出を減少させるが、同時に有機物の燃焼により炭素の放出も引き起こすと推察された。以上のことから、森林管理は生態系純生産量(NEP)を増大させるが、バイオエネルギー利用は増大と減少の両方の効果をもたらすことが示された。森林の炭素循環は正負の対立する効果のバランスの上でなりたっており、落ち葉搔きをしない下草刈りのみの管理(UH)が最も高いNEPを示した。管理強度が強い場合(LR)はNEPに対する正の効果とともに負の効果も大きくなるが、収穫物のエネルギー利用により生態系を炭素の吸収源に留めることが可能であることが示唆された。


日本生態学会