| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) F2-28 (Oral presentation)

自己間引き則下にある森林の林分葉量の経年変化に関するモデル解析

小川一治(名古屋大・生命農学)

Kira and Shidei (1967)の提案した古典的仮説では同種同齢の森林における林分葉量は林冠閉鎖後、最大値に達し一定を保ち、その結果GPPが一定となるとされている。一方、最近のRyan et al. (1997)の仮説では林分葉量は林冠閉鎖後減少し、全林分発達過程においては一山型となり、GPPも林分発達に伴い一山型の変化を示すとされている。

しかしながら、これら2つの仮説は断片的なデータに基づいて考え出されたものであり、何ら理論的根拠がなく、論理的説明が不可能である。そこで、本研究では以下のような3つの仮定に基づき、林分葉量の経年変化に関するモデルを作成した。その3つの仮定は、それぞれ、[1] 林冠閉鎖後、自己間引き則(Yoda et al. 1963, West et al. 1997, Enquist et al. 1998)の成立、[2] 平均個体葉重と平均個体重とのアロメトリー則の成立、[3] 林分密度の経年変化はある種のロジスティック式に従う(Ogawa 2012)、である。

本研究のモデル解析により、Kira and Shidei とRyan et al.の両仮説は、場合分けにより理論的に存在することが証明された。先行の研究(Ogawa 2012)でも理論的に林分葉量は一定または一山型という両方の結果が出ている。一方、最近になってSumida et al. (2013)は20年に渡る観測から林分葉量は一定と結論づけている。そこで、Ogawa (2012)のモデルを使ってSumida et al. のデータについても吟味してみた。


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