| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) F2-29 (Oral presentation)
<背景> 樹木1本には、太い枝や細い枝など、様々なサイズの枝が共存する。本研究の目的は、樹木1本の枝サイズ分布を明らかにすることである。
<方法> 帯広畜産大学近郊の売買川河畔林におけるハルニレ3個体を選定した。試料木について大枝を1本ずつ採取して実験室に持ち帰って自然乾燥させた。分岐点毎に各枝をノコギリおよび剪定ばさみで分解し、全ての枝の長さおよび直径をノギスまたはメジャーで計測した。
<結果> 葉が付いている末端の枝(去年、新しく伸びた部分の1年生枝)の集団のサイズ分布は、対数正規分布で近似できた。
<考察> ある太い枝が分割を繰り返して、大きさの異なる娘枝に分かれていく様子は、ジブラ過程とみなすことができる。ここから、末端の枝サイズにおける対数正規分布が説明できる。
幹から末端に至る全ての枝を含む集団のサイズ分布は、これまで知られているようにべき分布であり、「A倍太い枝はB分の1の本数しかない」という「サイズと頻度の負のべき乗則」を意味している。樹木がフラクタル構造を持っていると仮定すると、これらのべき分布が説明できる。
以上の結果を合わせると、「1個の枝別れするフラクタル構造があるとき、それを構成する全てのパーツ集団のサイズ分布はべき分布であり、末端パーツだけを取り出した集団のサイズ分布は、対数正規分布である」と結論される。