| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) F2-30 (Oral presentation)

ネパール東部に生育するシャクナゲの葉の通水コンダクタンスと生育標高の関係

*種子田春彦(東京大・理), Dhan Raj Kanel (Depart. Plant Resources of Nepal), 池田博(東京大・博物館)

標高は気温や降水量といった植物の水利用に関する生育環境を大きく変化させる。そこで、生息標高と葉の通水コンダクタンスの関係を調べるために、ネパール東部の山岳地帯(標高2500 m から4500 m)に生息するシャクナゲ5種(Rhododendron anthopogon, R. arboreum, R. barbatum, R. campanulatum, R. thomsonii)において、それぞれの種の葉を生育標高の上限と下限で採集し、葉の通水コンダクタンス(K L)を高圧流速計法で測定した。

その結果、高い標高に生育する種ほど、高いK Lを持つことが明らかになった。また、5種のうち2種では、生育標高の上限に生息する個体からの葉で、より高いK Lが測定された。さらに、高いK Lと強く関連する2つの形態的な特徴を見出した。ひとつは、葉のサイズである。輸送距離の小さい面積や長さの小さい葉ほどK Lは有意に低くなった。もうひとつは、維管束鞘延長部の細胞の一次壁におけるリグニンの沈着である。高山帯まで分布する種(R. anthopogonR. campanulatum)では、リグニンの沈着がないまたは、向軸側に延びる維管束鞘延長部だけでリグニンが沈着していた。これに対して、より低標高に分布する種( R. thomsoniiR. arboreumR. barbatum)では、維管束鞘に加えて上下の維管束鞘延長部のすべての細胞の一次壁にリグニンが沈着していた。細胞壁へのリグニンの沈着は、アポプラストにおける水や無機塩、糖の輸送を阻害することが指摘されている。これらの形態によって、葉内の水の輸送経路を変え、K Lに影響している可能性がある。


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