| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) F2-32 (Oral presentation)
日本の暖温帯域の潜在植生は常緑樹林であるといわれている。ところが、京都府の広葉樹二次林において、毎木調査のデータから樹種ごとの現存量の変化をみると、逆に落葉樹の相対的な優占度が高まっていた。そこで生長の樹種差が生じるメカニズムを樹木の炭素獲得の視点から明らかにするため、現在の優占樹種である落葉樹コナラと常緑樹ソヨゴ、さらに今後優占する可能性が高い常緑樹アラカシにおいて光合成速度の連続測定をおこなった。夏季の光合成速度を比較すると、降雨後の乾燥過程においてソヨゴの光合成速度は徐々に低下していたが、コナラではそのような傾向はみられなかった。光合成の温度依存性をみるとコナラの光合成はソヨゴの光合成よりも最適温度が高かった。これらのことから夏の暑さはソヨゴの光合成低下に寄与していることがわかった。また、冬季にはコナラは落葉により光合成機能が失われるが、ソヨゴの光合成速度も半減することが明らかになった。
毎木調査の結果からコナラのRGRはソヨゴよりも高かったが、アラカシのRGRはコナラを上回っていることが示されている。ソヨゴとアラカシの光合成を比較することにより、常緑樹間で生長差が生じる生理的メカニズムが明らかになると考えられ、コナラとアラカシの光合成を比較することにより、将来起こるであろう常緑樹林への植生遷移が起こる生理的メカニズムを明らかにできると考えられる。