| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) J1-13 (Oral presentation)

津波後の仙台市海岸残存林の鳥類生息状況

*平泉秀樹(仙台湾の水鳥を守る会),原慶太郎(東京情報大学),平吹喜彦(東北学院大学)

東日本大震災の津波は仙台湾岸を覆っていた海岸林に大きな被害を与えた。仙台市の浸水域ではマツ林の面積は4.19k㎡から0.79k㎡に減少し(環境省自然環境局生物多様性センター,2013)、ややまとまって残った地域でも残存部と消失部が櫛の歯状に交互に並んだ状態になっている。杉野目(2012)は震災直後の2011年8〜12月に残存林で鳥類ラインセンサス調査を行い、以前の標識調査の捕獲種と比較して、薮や常緑樹を好むメジロ、ウグイス、アオジなどが少なく、疎林や林縁を好むカワラヒワ、カシラダカ、スズメ、ホオジロなどの割合が高いことを報告しているが、その後の3年間、長期モニタリングのための基礎調査を実施したので報告する。調査は仙台市域の海岸残存林17ヶ所で、震災後2年目の2012年春から毎年繁殖期に2回、越冬期に3回のポイントセンサス法(50m×50m内10分間、範囲外出現種名も記録)により行った。

3年分の整理が終わった繁殖期についてみると、杉野目の結果と同様に、海岸林ではスズメ、カワラヒワ、ホオジロといった疎林等を好む種が多くなっていた。3年間を比較するとスズメやホオジロが増加傾向にあるほか、2014年には農地等を好むムクドリが多数見られるようになった。その一方で、樹林性のコゲラや薮を好むアオジには減少傾向が認められ、残存林では樹林性鳥類の生息環境は悪化しているようだった。樹林外を含む範囲での出現頻度は、周辺の樹林消失部や被災農地での草地の発達のためか、ホオジロ、オオヨシキリ、キジ、ムクドリ、ヒバリ、モズなどで増加傾向にあった。小規模な残存林には周辺環境の影響も大きいと考えられるが、既に隣接農地の復旧はほぼ終わり、今後樹林消失部の盛り土植栽が始まるため、今後も調査を継続して変化を記録していく予定である。


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