| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) J1-24 (Oral presentation)
陸上生態系(森林・草原)では植食・肉食動物(昆虫)の現存量(biomass)は共に平方メートル当たりの湿体質量で100mg程度と植物葉の数100gに比べ極端に少なく、葉の年間被食率も5%程度以下で「緑の世界(green world)」が広がっている。この傾向は種多様性の異なる熱帯~温帯、古生代~現代の森林を問わず一貫しているが、水圏・地中生態系では動物が多く植物体の植食動物による消費率も高い。この一貫した傾向には構造的要因が推測されるが、従来の議論はbottom up, top down等定性・イメージ的に終始し数学的・定量的な議論は少なかった。そこで演者は植食者・肉食者の現存量(g/m3等具体的物理単位付数値)を植物・動物の栄養価(例えば単位体積あたりのタンパク質量など)、摂食速度、肉食者有効探索体積比、呼吸・代謝減少率等の物理単位付諸因子から予測する数理平衡モデル(数式)を確立した。本数理モデルは、森林やサバンナにおける上記諸因子の実測値・推定値をもとに、森林生態系やサバンナ生態系の植食・肉食者現存量(たとえば森林生態系では植食・肉食動物の現存量が湿体質量として共に約100mg/m2程度のオーダーになることなど)を平衡収束解としてほぼ正確に予測し、植物の年間被食率が年間数1~6%程度と低く植物が食べ尽くされない「緑の世界」を予測した上、地上生態系で動物が少ない理由、植物栄養価と昆虫発生量の関係、栄養防御や誘導防御が植物に有益な理由、ギルド内捕食効果、種多様性と動物現存量の関係、大発生の条件等を説明・予測できた。具体的・詳細な数式・内容はarXiv:1412.5773を参照のこと。