| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) K1-14 (Oral presentation)

コメツキガニの巣穴を巡る闘争時間:giving up timeのベイズ推定

*古賀庸憲(和歌山大・教育), 熊谷直喜(国環研・生物), 吉野健児(佐賀大・低平地沿岸), 池田早登司(和歌山大・教育)

複数の機能(役割)を持つ資源をめぐる闘争では、競争者がそれぞれ異なる資源の役割で動機づけられ闘争する場合がありうるが、そうした闘争に関する詳細な解析は少ない。コメツキガニScopimera globosaの巣穴は捕食者からの避難場所であり繁殖場所でもあるという複数の機能を持ち、私たちはこれら2つの側面の価値を実験的に操作し、その闘争時間を階層ベイズモデルによって解析することで異なる役割で動機づけられた闘争行動がどのように解消されるのかについて初めて明らかにした。Giving-up timeの長い個体が勝利する仮定のもとで、giving-up timeが自分の体サイズのみによって決まるモデル(self assessment)、相手との体サイズ比によって決まるモデル(mutual assessment)を作成した。これらのモデルについて、所有者と侵入者の動機付けの『有り』『無し』といった条件毎に、ベイズ事後モデル確率に基づいたモデル選択を行った。解析の結果、侵入者は相手との相対的な資源保持能力を評価して闘争時間を決めているが、所有者は自分の力量だけで闘争に費やす時間を決めており、闘争者のステータスにより行動の戦略が異なることがわかった。これまでの闘争行動の解析では侵入者、所有者ともに同一の戦略をとると仮定されているが、資源の役割が一つではない場合、その仮定は必ずしも当てはまらないことが分かった。また、ステータスによって戦略の違いが生じる背景には本種の隠蔽色が関与していることが推察された。


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