| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) K1-17 (Oral presentation)

カエルコールは無駄な努力か―オットンガエルのコールと産卵日の関係

*岩井紀子(農工大)

カエルはオスが集合してコールを行ない、コーラスによってメスを呼ぶとされる。これは、コーラスに参加するオスは単独でコールを行なうよりも多くのメスを呼ぶことができ、適応的なためと考えられてきた。しかし、カエルの繁殖場所が局所的であるために、必然的にオスの集合が観察される可能性や、行動しやすい気象条件が雌雄で類似しているために、雌雄の数に見かけ上の相関が起こっている可能性がある。本研究では、これらの可能性を分離し、オスによるコールがメスを繁殖地に呼ぶことに直接貢献しているか明らかにすることを目的とした。奄美大島に生息するオットンガエルを対象とし、同一の繁殖場所におけるコールの有無と産卵数の関係を、気象条件を考慮して比較した。ICレコーダによる毎晩5分ずつの音声録音と、産卵数の確認を行なった結果、コールのある夜ほど産卵が認められた。コールの有無と産卵数それぞれについて、気温、湿度、雨量、風速、およびこれらの二乗項と月齢を固定効果、日付をランダム効果とした一般化線形混合モデルによる解析を行なった結果、メスは気温のみ、オスは気温、雨量、および風速の含まれたモデルが選択された。これらの気象項目を含んだ共分散構造分析により、コールの有無が産卵数に与える影響を気象条件と分離して評価した結果、産卵数は主に気温によって決まっており、コールの有無を考慮したモデルとしないモデルとでは説明力に大きな相違は認められなかった。オットンガエルにおけるコールの有無と産卵の同調は、主にコールや産卵に適した気象条件が類似しているために起こり、オスによるコールがメスを繁殖地に呼ぶ効果は小さいことが明らかとなった。オットンガエルのコールは、遠くのメスを呼ぶよりも、繁殖地に訪れたメスに対してアピールする役割が強い可能性がある。


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