| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(口頭発表) K1-23 (Oral presentation)
カイメンは水中の有機物を濾しとって養分摂取する濾過食性の底生生物で、呼吸や採餌は体内に張り巡らされた水路(水溝系)を通して行う。また、カイメンは唯一胚葉形成を行わない動物分類群で、筋肉や神経系などの組織を完全に欠いているため、外部からの情報を受容・処理し、それに対して反応を返すことは難しい。しかし、カイメンも他の動物と等しく、時々刻々と変化する外部環境にさらされており、その変化には何らかの形で対応を余儀なくされていると考えられる。そこで本研究では、カイメンの外部状況の変化に対する反応性を明らかにすべく、クロイソカイメンを材料として以下の実験を行った。まず2つの出水孔をもつ個体を野外から採集し、水槽内で片方の出水孔を物理的にふさいだ時の周囲の流れの変化を粒子イメージ流速計測法(Particle Imaging Velocimetry)を用いて調べた。その結果、ふさがれていない方の出水孔から吹き出す水の流速の上昇が確認された。この結果は、2つの出水孔のあるカイメンでも水路は内部でつながっていることを意味し、生物付着などによって片方の出水孔が物理的に塞がれた場合でも呼吸や採餌を続けることができるということを強く示唆している。また、この流速の変化はきわめて短時間で起こったことから、片方の出水孔がふさがれると自動的にもう片方に流れ込むような構造になっていると予想される。そこで、内部の水路構造を更に詳細に検証するために、MRI装置を用いて水路の可視化をおこなった結果、内部の流れの有無についても可視化することができたので、併せて議論する。