| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-028 (Poster presentation)
限られた資源の中で、生産する接合子の数を犠牲にサイズを大きくすることは一般的に質への投資と呼ばれる。質への投資は個々を有利に生存させる戦略として、多くの理論研究がなされている。しかし、接合子のサイズ増加による生存率上昇の関係は、実際の生物において確認されていない。本当に接合子はサイズが大きい方が有利になりうるのか?多くの生物でこれを確かめるのは困難である。様々なサイズの接合子を比較できないことがその大きな理由である。そこで本研究では、海産緑藻エゾヒトエグサのもつ生活史特性を活かして、接合子サイズの変化に伴う発生過程の違いを実験的に検証した。
野外採取した配偶体より、遺伝的に均質な幅広いサイズの接合子を得た。それらの発生過程を個別に追跡し、生存・死亡および成長した胞子体サイズを計測した。得られたデータより接合子サイズと生存率、接合子サイズと胞子体サイズの関係を統計解析した。
解析の結果、1)接合子サイズ増加による生存率上昇の関係が認められた。また、2)接合子サイズと胞子体サイズの間には有意な相関関係が存在した。大きい接合子ほど生き残りやすく、より大きな胞子体へと成長する傾向があることが明らかとなった。接合子サイズの増加は生存上、さらには成長後のサイズ上でも有利に作用することが示唆された。