| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-031 (Poster presentation)

緯度勾配に沿ったオオバナノエンレイソウ個体群の適応度の比較

*川村弥司子(山形大・理)・山岸洋貴(弘前大・白神)・大原雅(北大・環境科学)・富松裕(山形大・理)

分布域の決定要因を明らかにすることは、生態学における最も重要な課題の一つであり、気候変動が及ぼす影響を評価する上でも重要である。Abundant center model(ACM)では、生物の存在量が分布域の中心で最も大きく、分布限界に近づくほど小さくなることを予測している。このような存在量の地理的変異は、繁殖や成長に関わる適応度成分の違いを反映している可能性がある。しかし、広範囲にわたり、多数の個体群において存在量や適応度成分を包括的に調べた研究は少ない。本研究では、東北地方を分布南限とする多年生草本オオバナノエンレイソウ(Trillium camschatcense)を対象として、分布限界の生成に寄与しうる適応度成分の特定を試みた。分布南限から緯度勾配に沿った15の個体群において、複数の適応度成分を測定した。その結果、生育密度と個体群サイズは中緯度(分布域の中心)で最大となり、ACMの予測を支持していた。個体サイズは、低緯度(分布南限)の個体群ほど小さかった。シカによる果実の被食圧が大きかった個体群を除けば、種子生産量は低緯度の個体群ほど少なかった。幼植物の加入率は中緯度で最大となり、低緯度もしくは高緯度になるにつれて低くなった。以上の結果から、分布南限の個体群では、分布域の中心に比べて個体サイズが小さい、種子生産量が少ない、幼植物の加入率が低いことが明らかとなり、これらの適応度成分が分布南限の生成に寄与している可能性が示唆された。


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