| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-034 (Poster presentation)
繁殖干渉とは、繁殖過程において適応度を低下させるあらゆる種類の種間相互作用を指す言葉である。その強力な排他性から生態学的侵襲において重要な役割を担うと考えられている。
現在ほとんどの植物分布はすでに繁殖干渉を経験後の安定的な状態であり、在来種同士の繁殖干渉を検出することは困難であると考えられてきた。そのため、繁殖干渉研究のほとんどは外来種が在来種を駆逐するメカニズムを説明することに焦点が当てられてきた。しかし、在来種種間の競争や多種の共存条件を考える際や、種分化や形質置換に対する選択圧としても、繁殖干渉の効果を考慮する必要がある。
本研究では、在来一年生草本であるツユクサCommelina communisと、同属の一品種であるケツユクサC. communis form ciliateを用いて在来近縁種間の繁殖干渉の研究を行った。両品種は苞上の毛や短雄蕊の形態などの形質に差異がみられ、雑種形成がみられないことが示唆されているが、頻繁に同所的に共存している。
まず、二品種が同所的に分布している調査地において、繁殖干渉が生じうる前提条件を調査した。一つ目に、二品種間で配偶機会(品種間受粉)が発生しているか、野外での両品種の送粉者とその訪花パタンを観察した。次に、他品種花粉の柱頭付着が適応度(種子生産)低下をもたらすのかを調べるために人工授粉実験を行った。加えて、繁殖干渉の一番の特徴である頻度依存的な適応度の低下が野外集団で存在しているのかについて、二品種の頻度が異なる複数地点を対象にそれぞれの種子生産を調査した。
本研究の結果、同所的に分布するツユクサとケツユクサにおいて、繁殖干渉が発生していることが示唆された。