| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-036 (Poster presentation)

なぜカタバミは夜に花を閉じるのか

*大島誠,今村彰生(北教大旭川)

被子植物には光や温度などの刺激で花を開閉運動させる種が多く知られている。では、なぜ花を閉じなくてはいけないのか。花を開閉させる至近要因は解明されているが、究極要因を解明した研究は少ない。エゾタチカタバミは、夜間や天候が悪い日などに花を閉じるため、花を閉じることは保温のためだと考えられる。そこで本研究では、カタバミの開閉運動は夜間の温度低下とそれに伴う結露から種子生産の低下を防ぐためであるという仮説を立て操作実験によって検証した。

エゾタチカタバミの蕾に57 µm のメッシュ生地の袋をかけ、開花後に自家受粉または他家受粉を行った。受粉処理後に、花弁を除去した花と除去していない花、夜間の結露を模した霧吹きをした花としていない花について、結実の有無、花あたりの種子数と合計種子重量を計測した。また、夜間の温度と結実の関係を調べるために人工気象器を用いて暗期温度を25˚C、20˚C、17˚C、15˚Cに設定し、花弁を除去した花と除去していない花の結実の有無を調べ、結実確率50%を閾値として閾値温度を求めた。

その結果、野外で花弁を除去した花は結実せず、除去していない花だけが結実し、花弁除去の有無で結実の有無に差があった。一方、霧吹きの有無に関わらず結実し、種子数、合計種子重量は霧吹きの有無による有意な差は見られなかった。結実の有無と種子数を目的変数とし、花弁除去と霧吹きを説明変数として一般化線形モデル及び赤池情報量規準によるモデル選択をしたが、これらの交互作用は選択されなかった。暗期温度と結実の関係の調査では、暗期温度25˚Cの条件では花弁除去に関わらず結実し、他の温度では結実しなかった。閾値温度は一日の最低気温より高い温度が推定され、花を閉じると保温されると考えられる。

このことから、カタバミの開閉運動は夜間の結露からではなく、低温から種子生産の低下を防衛するためであると示唆された。


日本生態学会