| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-037 (Poster presentation)
環境傾度にそった表現型の変化は,多くの植物種において見られる特徴である.これは自生する環境に合わせて,表現型可塑性や局所適応によって形態が変化しているためである.環境傾度にそった表現型の変化を理解することは,植物の分布を制限する要因の特定や,植物の気候変化に対する適応能力の予測のために重要である.アキノキリンソウ(広義:solidago virgaurea)はキク科の多年生草本である.本種は低地から高山まで連続的に分布している.日本の中部山岳において,アキノキリンソウは標高傾度にそって形態形質やフェノロジーなどが変化していることが確認されている.本研究では,標高傾度にそったアキノキリンソウの形態変化が,標高による環境の違いによって生じているかを調べるために,長野県に位置する乗鞍岳(3026 m)の異なる標高(1600 m~2800 m)由来のアキノキリンソウの種子を用いて,標高650 mの共通圃場による栽培実験を行った.同一環境下の生育にも関わらず,成長期1年目において,当年生長終了時の葉重量あたりのクロロフィル濃度と窒素濃度は由来する標高が高いほど増加し,一方,葉面積あたりの乾燥葉重量は減少した.成長期2年目において,茎高,葉重量,頭花数,開花期間は由来する標高が高いほど減少し,一方で地下部へのアロケーションは増加した.また,高い標高由来の個体ほど花芽形成や開花が早かった.これらの表現型の変化は山岳における自然個体の表現型の変化と一致し,標高にそって遺伝的な変異が生じていることが示唆された.