| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-038 (Poster presentation)

Effects of local conspecific abundance on seed set and seed predation, and control of Carpinus laxiflora (Betulaceae) population density

*Katori, T., Nakashizuka, T. (Tohoku univ.)

我々は繁殖個体の周辺の同種個体密度が、結実率と種子の虫害率に与える影響を明らかにし、それによる個体密度への影響を考察した。アカシデCarpinus laxiflora (カバノキ科) を対象とし、東京都稲城市の落葉広葉樹二次林で調査を行った。我々は開花個体率が高かった年 (2013年) に、27個体から種子をそれぞれ100個以上サンプリングし、それらの種子を充実・虫害・シイナ・未熟・腐敗・損壊に分類した。ここではシイナは受精に失敗した種子とみなした。また、未熟・腐敗・損壊は少数かつ受精・非受精の判別ができなかったため、結実率・虫害回避率の計算には含めなかった。各個体の結実率 (= (充実+虫害) / (充実+虫害+シイナ)) は、周囲の同種繁殖個体の密度との間に有意な正の相関を示した。一方、結実種子の内の虫害回避率 (= 充実 / (充実+虫害)) は、 周囲の同種繁殖個体の密度との間に有意な負の相関を示した。それによって、全種子中の充実種子の割合は、中間的な個体密度の場合に最も高くなった。このような現象は過去の同様な研究の中でもほとんど観察されていないが、個体にとって最も繁殖成功に適した周囲の繁殖個体密度が存在することを提示することができた。また、この現象はアカシデの個体密度をコントロールするメカニズムとしても機能していると推察した。


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