| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-039 (Poster presentation)
カエデ属には個体内に雄性花と両性花を持つ種が存在する。これらの両性花の雄蕊は花粉を出さないため、形態的には両性花だが、機能的には雌性花として扱われる。このような雄蕊は仮雄蕊と呼ばれるが、機能的意義があるのか、あるとすれば何であるかの報告はない。
訪花昆虫は花粉を得ることを目的の一つとして訪花をすることから、このような仮雄蕊は花粉があると見せかけて訪花昆虫を誘引している可能性がある。そこで、本研究ではオガラバナの仮雄蕊が訪花昆虫を誘引する機能をもつかを明らかにすることを目的とした。調査では、無処理花序と除雄処理花序について、訪花昆虫を観察し滞留時間、30分間ごとの合計訪花回数を記録した。結実後に種子を採取し、種子重量、花序ごとの合計種子重量、花序ごとの種子数、胚珠ごとの種子の有無を記録した。これらのデータに基づいて、除雄処理によって訪花回数や滞留時間、種子数や種子重量が減少するか、訪花回数や滞留時間が減少することで種子数や種子重量は減少するかを検証した。
その結果、滞留時間は除雄処理花序で有意に小さかった。滞留時間と種子数および合計種子重量との間にそれぞれSpearmanの順位相関係数に有意な正の相関が見られた。種子数および合計種子重量は無処理花序と除雄処理花序の間に有意な差は認められなかった。一般化線形モデルおよび赤池情報量規準によるモデル選択の結果、胚珠ごとの種子の有無に対して除雄処理は負の影響、花序ごとの合計滞留時間は正の影響を及ぼしていた。以上から、オガラバナの仮雄蕊は滞留時間を長くする機能をもつと考えられるが、それによって結実までは向上していなかった。その理由として、処理によるストレスが考えられる。仮雄蕊の訪花昆虫に対する誘引効果が結実に与える影響に関しては更なる検討が必要である。