| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-043 (Poster presentation)

萌芽樹種の株構造における10年間の変化:渓谷林の下層優占種チドリノキについて

*田畑早紀,小山(中井)亜理沙,鳥丸猛,万木豊,木佐貫博光(三重大院・生資)

渓谷林の下層を優占するチドリノキの株構造の変化を,2004年から2014年までの10年にわたって,2年間隔で調べた。個体群全体における株の幹断面積合計や幹本数は減少傾向にあった。株ごとに幹断面積合計および幹本数の変化を見たところ,10年の間に徐々に幹断面積合計および幹本数が減少した株や,2年間で幹断面積合計および幹本数が大幅に減少した株がみられた。徐々に幹断面積合計および幹本数が減少したことは幹の立枯れが主な原因であった。また,小径幹は動物の摂食によって損傷を受ける頻度が高く,動物の摂食も株サイズの減少に影響を及ぼすと考えられる。2年間で大幅に幹断面積合計および幹本数が減少した株は,水流による洗掘や林冠木の倒伏の巻き添えなどの撹乱が主な原因であった。また,10年間の幹の成長量が枯死による幹断面積合計の減少量を上回り,幹本数が減少したものの幹断面積合計が増加した株がみられた。幹の直径にもとづく株の変動係数と幹本数の変化は,枯死した幹の直径に応じて多様であった。株の中で小径または大径の幹が枯死した株は変動係数が減少する傾向にあり,中径の幹が枯死した株は増加する傾向にあった。また,幹本数に変化がない株は変動係数が減少する傾向にあり,幹の成長によって株の幹直径のばらつきが小さくなった。幹本数10本以上の大株および幹本数5本以上10本未満の中株では変動係数が減少傾向にあった。大径幹では立枯れや地表撹乱による枯死が多かった一方,小径幹では立枯れと摂食による枯死が多かった。今後,動物による摂食や地表撹乱が続くと考えられるため,株の維持における中径幹の役割が大きくなることが予想される。


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