| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-047 (Poster presentation)
食虫植物であるモウセンゴケDrosera rotundifoliaは、一般に貧栄養な湿地に生育するとされているが、通常と異なる環境下で多くの生育が確認されたため、その生育環境と動態を調査した。
調査地は新潟県佐渡島の新潟大学演習林(以下、演習林とする)と、大塚山の林道脇の法面である。演習林ではススキなどの草本やタニウツギなどの低木が覆う場所、小~中礫や土壌が露出している場所があった。モウセンゴケは法面下部に最も多く分布し、中部にも分布が確認された。大塚山では植生がほとんどない裸地上にモウセンゴケとコケ類が生育していた。
演習林及び大塚山の生育地から土壌を採取し、含水率、pH、有機物含有率を測定した。演習林の法面下部に50cm×50cmのコドラートを5つ設け、5月~10月に月1回植生調査を行った。演習林において6月~11月に当年生実生の生残を調査した。
演習林の土壌は日本の一般的な森林土壌のA~B層程度で中栄養だったが、大塚山の土壌は有機物が極めて少なく貧栄養だった。両調査地の含水率は40~50%で、一般的な生育地である湿地土壌の半分ほどだった。このように本調査地では、モウセンゴケは幅広い土壌環境に生育していた。ススキなどの大型草本は7~8月に最も被度が増加したが、モウセンゴケは調査開始時の5月中旬に他の植物全体とほぼ同程度の被度を示し、その後は緩やかに増加した。2014年7月上旬に64mm/時の激しい降雨があったため、6~7月の消失率が11%で最も高かったが、その後は被陰等による枯死はほぼ見られず、秋までの生残率は高かった。このように、モウセンゴケは地表撹乱による消失はあるものの、他の植物より早く開葉し、上層が覆われる前にある程度の光合成と飛来昆虫の捕獲を行うことで、その後の生育に必要な栄養分を得ていることが示唆された。