| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-049 (Poster presentation)

クローナル植物の節間長に遺伝子型や栄養塩量は影響するか?

*松尾知実(首都大・理工・生命),可知直毅,鈴木準一郎(首都大・理工・生命)

クローナル植物の節間長は環境要因と遺伝的要因によって変化するとされるが、その知見は少ない。また、植物の個体サイズと器官の大きさは一般に相対成長するが、クローナル植物の個体サイズと節間などのモジュールの大きさの指標の相対成長に関する報告も少ない。そこで節間の変異が、遺伝要因、環境要因あるいは相対成長のいずれに起因するのかを評価するため、シロツメクサ(Trifolium repens)とカキドオシ(Glechoma hederacea subsp. grandis)を材料に栽培実験を行った。

環境要因と遺伝的要因を2要因とし、収量と一次ストロン長と節間長に対する影響を種ごとに評価した。環境要因には栄養塩量の2水準(貧栄養と富栄養)を設定し、遺伝的要因として、シロツメクサでは9、カキドオシでは6の遺伝子型を用いた。約8週間の栽培後に収穫し、収量と節間長と一次ストロン長を測定した。両種共に、収量と一次ストロン長と節間長には、遺伝子型と栄養塩量による差が有意に見られた。シロツメクサでは、両者の交互作用が見られる場合と見られない場合があった。カキドオシでは交互作用は見られなかった。個体で最も長い3つの節間長の遺伝率は、シロツメクサでは0.30か0.33、カキドオシでは0.38で、遺伝分散より誤差分散が大きい傾向が認められた。収量、節間長、一次ストロン長は相対成長した。シロツメクサでは、同じ収量の個体で比較すると、一次ストロンと節間長の関係は、栄養塩量と遺伝子型によって異なった。

以上より節間長の変異には、遺伝的および環境的な影響に加え、偶然の効果が大きいと考えられる。またクローナル成長形質の変異の検討では、相対成長の影響を考慮すべきである。


日本生態学会