| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-050 (Poster presentation)
地球温暖化による多大な影響が懸念されている高山生態系を対象に、植生や生物季節(フェノロジー)の変化をモニタリングする調査研究が注目を集めている。複数種の高山植物を対象に、その開花フェノロジーの経年変化を調査した研究例は、北海道大雪山における報告(工藤・横須賀,2012)があるものの、本州中部においては未だ少ない。本研究は、飛騨山脈立山連峰の高山帯を調査地とし、風衝地と雪田に生育する高山植物を対象に、それらの開花時期と開花数の経年変化を明らかにし、その変動を気象要因との関係から明らかにすることを目的として実施した。それぞれの調査地に、10m四方の調査区を設定し、その中に含まれる高山植物4種(風衝地:イワウメ、ミヤマキンバイ、チョウノスケソウ、トウヤクリンドウ.雪田:チングルマ、ハクサンイチゲ、ミヤマキンバイ、アオノツガザクラ)について、パッチあるいはシュート毎に標識を付け、約1週間間隔でそれらのつぼみ数、開花数、枯花数を調べた。雪融け時期や開花開始日の正確な日付を特定するため、インターバルカメラを用いた観察も併用した。各調査地に設置した気温計と地温計(地表面)のデータから、開花に至る有効積算温度を算出した。その結果、風衝地に生育する植物は雪田に生育する植物に比べ、開花日(開花初日)の年変動が小さく、開花に至る有効積算温度の年変動が小さく、開花数の年変動が大きいことが分かった。有効積算温度については、気温を用いるよりも地温を用いた方が、経年変化が小さくなることを確認した。以上の結果より、なぜこのような変動が生じたのかについて考察を行った。