| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-058 (Poster presentation)

熱帯樹種の実生における病害による負の密度効果と葉内菌群集の関係

*稲垣辰哉(京大・農), Justin Schaffer, Elizabeth Arnold(アリゾナ大), Camilo Zalamea, Carolina Sarmiento(イリノイ大), 伊津野彩子, 北島薫(京大院・農)

個体群の局地的密度の上昇に伴って種に固有の天敵の影響で死亡率が高まるという負の密度効果は、植物群落の種の多様性の維持などの重要な役割を担っている。また、葉内菌群集は熱帯地域においてその多様性が高く、植物の病原体と拮抗して病気を防ぐということが近年報告されている。パナマのバロ・コロラド島に自生するマメ科高木Tachigali versicolor の実生において病原菌によると推測される負の密度効果が観察されているが、実態はあまり知られていない。今回の研究では対象種の個体密度が個体サイズや病気の症状、また葉内菌群集の組成へどのように影響するかを定量化することが目的である。

方法:2014年9月16日~10月7日の間、パナマのバロ・コロラド島において野外調査を行った。個体密度の高い場所と低い場所のそれぞれについて対象種の実生の樹高、生存している葉及び小葉の数、葉及び小葉の総数、病気に固有の斑点の数(/10 cm 2)を記録し、個体密度の影響を分散分析によって調べた。またその際にサンプリングした葉について、培地による隔離と次世代シーケンサーを用いたメタゲノム解析を行った。

結果:生存している葉及び小葉の数の合計、葉及び小葉の総数、葉及び小葉の生存率は個体密度の高い場所でより低く、葉上の斑点の数は個体密度の高い場所でより高かった。このことから、葉の生存に悪影響を与える病原菌が個体密度の高い場所において個体の葉数の減少を引き起こし、死亡率を上昇させることが推測される。また次世代シーケンスと培養の結果、多様な菌類が病原菌と群集生態学的関係をもつ可能性があることが分かった。


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