| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-060 (Poster presentation)

京都市近郊林における遷移進行による野生ツツジ属2種の樹冠部の可塑性が株構造に与える影響

*川村奈々, 平山貴美子(京府大院・生命環境)

低木種の多くは複幹形の生育形となっており,幹を繰り返し形成することで個体の寿命を長期化させるとされる。また,小型な幹ほど非同化部分の増加を抑えつつ多くの葉を配置することができ,暗い環境下で有利であるとされる。さらに,固着性である樹木は,葉やシュートといった各段階のモジュールを可塑的に変化させることで様々な環境に適応している。京都市近郊二次林では遷移が進行し,里山の指標種である低木性の野生ツツジ類の減少が指摘されている。野生ツツジ類の個体の維持様式は遷移進行に伴ってどのように変化し,それがどのように個体群動態に影響しているのだろうか? 本研究では,京都市近郊の遷移段階中期にあたる落葉広葉樹二次林(落葉林)と遷移段階後半期にあたるコジイ優占林(常緑林)において,そこに自生するコバノミツバツツジとモチツツジを対象に個体群構造,株構造と各モジュール段階(葉,シュート,樹冠)の形態的可塑性を調べ,樹種間,林分間の違いから遷移進行が両樹種の個体群動態に与える影響を検討した。

コバノミツバツツジのシュートは機能分化し,葉群維持に特化した短枝を樹冠内に多く着けていた。また,落葉林に比べ常緑林では葉寿命は長く,樹冠部を傘型化する傾向を示し,葉から樹冠レベルにおいて遷移進行に対応していた。しかし,傘型化により個体内において自己被陰が生じ,主幹以外の幹の更新が制限され,それが個体群動態にも影響していると考えられた。一方,モチツツジはシュートや樹冠の可塑性は少なく,シュートにはコバノミツバツツジより寿命の長い多数の葉を着けていた。葉寿命はコバノミツバツツジと同様に常緑林で長くなったが,シュートの数はコバノミツバツツジより少なく,樹冠は小さくなっていた。モチツツジは,小さな樹冠の広がりでより効率的に光資源を獲得し,幹を置き換えながら個体を維持させていることが考えられた。


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