| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-113 (Poster presentation)
植物の個体に対する食害率は自身の形質だけでなく周囲の他の植物にも依存することがある。この被食防御の「連合効果」と呼ばれる相互作用は、食害率や成長に頻度依存性をもたらすことで、複数の植物種や遺伝子型の共存機構となる可能性がある。これまで連合効果は種間相互作用の一つとして数多く報告されてきたものの、種内多型で被食防御の連合効果が起こるかは知られていない。本研究では、ハクサンハタザオ(Arabidopsis halleri subsp. gemmifera)の有毛型・無毛型の遺伝的二型とそれらを食害するダイコンサルハムシ(Phaedon brassicae: 以下、ハムシ)を対象に、植食者に対する連合効果が植物の食害率や成長に対して少数派が有利となる状況をもたらすか(負の頻度依存性)を検証した。室内実験の結果、有毛型は少数派のときにハムシに食害されにくくなること、乾燥重は有毛型・無毛型ともに少数派のときに大きくなることが明らかとなった。ハムシが主な食害昆虫であるハクサンハタザオの野外集団でも、調査プロット(直径1m)内の無毛型の頻度が高くなるほど、有毛型に対する食害率が低下する傾向が、複数年にわたって見られた。加えて、2年間での二型の頻度の変化を比較したところ、無毛型が少数派を占めていたプロットでは無毛型の頻度が増加、逆に多数派を占めていたプロットでは無毛型の頻度が減少する傾向が見られた。一連の室内実験と野外調査の結果から、連合効果によって食害率や成長に負の頻度依存性がもたらされることで、有毛型・無毛型の共存が促進されていることが示唆された。