| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-118 (Poster presentation)
果実の大きさは種子散布者を決定する上で重要な特徴であり、屋久島においてはヤクシマザルが最も多様なサイズの果実を採食する。また、オオイタビは屋久島でヤクシマザルが採食する最も大きな果実とされている。しかし、オオイタビとヤクシマザルの関係についての研究はなく、未解明である。そこで本研究は、生態学的観察とゲノム分析を用いて多面的に両者の関係を把握することを目的とした。2014年10月20から22日、屋久島においてオオイタビのツルが巻き付いているセンダンに訪れる動物の観察、ヤクシマザルの行動観察と糞の採取、オオイタビの果実と採食痕より唾液の採取を行った。また、サンプリングした果実は長さ、水分含有量、色を計測した。唾液からはDNAを抽出し、mtDNA CO1領域と16S rRNA領域の塩基配列を決定することで、採食者の特定をおこなった。オオイタビの採食を行ったのは、ヤクシマザルとメジロだけであった。行動観察から、ヤクシマザルは果実を丸々飲み込む、手で割って中を食べる、一部を齧って捨てるという採食方法を取ることが観察された。一方でメジロは、既に割れた果実の中を啄むのみであった。また果実選択と果実の長さ、水分含有量、色には関係性は見られなかった。そして、糞28サンプル中全てからイチジクの種子を発見した。また、抽出したDNA10サンプル中ニホンザルと特定されたものは8サンプルであった。さらに、1サンプルからはニホンザルとヤクジカの両者が特定された。以上のことより、オオイタビを最も消費しているのはヤクシマザルであり、オオイタビにとって重要な種子散布者としての役割を果たしていることが考えられる。