| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-119 (Poster presentation)
東南アジア熱帯雨林の低地フタバガキ混交林では、群集内の様々な植物が2-10年の不規則な間隔で同調して結実するという一斉結実現象が発生する。一斉結実の進化を促した究極要因を説明する仮説の1つに、長期かつ不規則な間隔の非結実期によって果実食者の個体数を減少させ、突如に大量の果実を生産することによって果実食者を飽食させるという効果を重要視する捕食者飽食仮説があるが、実証的な検証は十分にはなされていない。本研究では、マレーシア・ボルネオ島に位置するランビルヒルズ国立公園において、1年以上の間隔をあけず連続して発生した2度の一斉結実期に野外調査を行い、2回の結実期の両方で結実したフタバガキ科5種を対象として、果実食性昆虫の食害状況を調べることにより、捕食者飽食仮説の想定する非結実期の効果を検証した。昆虫による果実の食害率を2回の結実期で比較した結果、5種のうち4種で食害率の上昇が認められた。また、各果実食性昆虫による果実の食害率を2回の結実期で比較した結果、主要な種子食者であるNanophyidae科のゾウムシやキクイムシ類による食害率の大幅な上昇が認められた。このように、いくつかの主要な種子食性昆虫は間隔を空けずに結実が生じた場合には急激に個体数を増加させる能力をもっており、不規則かつ長期にわたる非結実期は、一部の主要な種子食性昆虫の個体数増加の抑止力として機能しており、植物の適応度を高めるために有効であることが示唆された。一方で、5種のうち1種の果実における昆虫による食害率は、1回目より2回目の結実期で低い値となった。2回目に食害率の増加がみられなかった原因として、果実食者間の餌資源をめぐる種間競争、あるいは通常の結実フェノロジーに対応した生活史特性が考えられた。