| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-121 (Poster presentation)
人間の活動によって多くの外来種が移入し,特に近縁在来種に影響を与えることが問題となっている。外来種オッタチカタバミ(カタバミ科カタバミ属Oxalis dillenii)と近縁在来種カタバミ(Oxalis corniculata)は,托葉と茎の立ち方が異なるが同時期同所的に生育している。また両種の中間の形質を持つカタバミ属植物(不明タイプ)の存在が観察されている。これら3タイプを対象に,外来種が送粉者を介して近縁在来種の繁殖に与える影響を明らかにすることを目的とし東京の2地点で調査を行った。
(1)開花フェノロジーと訪花頻度を調べたところ,3タイプで開花時期は重なっておりコハナバチがどのタイプにも訪花していた。
(2)自動自家受粉と自然状態の処理を行い,結実率を比較した。在来種は2地点ともに自動自家受粉の結実率が自然状態の結実率よりも低く,不明タイプでは種子ができなかった。
(3)人工受粉実験を行ったところ,在来カタバミの柱頭に他のタイプの花粉が付着すると結実率が低下した。また不明タイプの花粉の稔性を調べたところ,花粉の大きさは不ぞろいで,大きな花粉のみ稔性をもっていた。
(4)3タイプのDNA量を測定したところ,不明タイプのDNA量は外来種・在来種の中間値を示した。また葉緑体DNAのtrnS-trnG,trnT-trnLを解析したところ,不明タイプでは外来種由来の個体と在来種由来の個体の両方が存在した。
以上の結果より,外来種や不明タイプの花粉がコハナバチによって送粉されることで,在来種の結実率を低下させたり,交雑が生じることが示唆された。さらに不明タイプは外来種と在来種の雑種の可能性があり,雑種個体が花粉親として親種と戻し交雑を行うならば,外来種が近縁在来種に遺伝的な影響を与えていると考えられる。