| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-123 (Poster presentation)
送粉者が複数の群集を利用している場合、群集間には送粉者を介した相互作用が存在する。例えば、ある送粉者の営巣場所と採餌場所が離れている場合、採餌場所に生育する植物の繁殖は、営巣場所の環境の影響を受ける。このため、送粉者の群集間移動の有無を把握することは、群集の送粉系機能の理解に欠かせない。
送粉者の群集間移動に関しては、Tomono & Sota (1997:Jpn J Ent 65:237-255)が、乗鞍岳(長野県)の高山帯でヒメマルハナバチの繁殖カーストがほとんど観察されないこと等を理由に、高山帯で採餌している働きバチは低標高帯に存在するコロニーからの出稼ぎであると推測している。しかし、演者らが2011-2013年にかけて調査を行った立山(富山県)の高山帯では、ヒメマルハナバチの繁殖カーストも多く観察された。このことは、立山は乗鞍岳と異なり、高山帯で採餌する働きバチが低標高帯からの出稼ぎではないことを意味しているのだろうか。
そこで本研究では、人工給餌器(フィーダー)を用い、立山の高山帯で採餌する働きバチがどこから来ているのか、2014年8月上旬から9月中旬にかけ、調査を行った。まず、高山帯にフィーダーを設置し、繰り返し採餌する働きバチを得ることができるか試みた。そして、フィーダーへの採餌間隔(巣から戻るまでの往復時間)と飛行方角をもとに、その個体の巣場所の推定を行った。
その結果、フィーダーへ繰り返し採餌する計18匹のヒメマルハナバチの働きバチを得た。これらの個体の巣場所の多くは、標高2400m以上の高山帯にあると推測された。総じて、フィーダーを用いてマルハナバチの営巣場所を推定する手法の有効性と、立山の高山帯で採餌するヒメマルハナバチの多くは低標高帯からの出稼ぎではないことが示された。