| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA1-126 (Poster presentation)

北限マングローブ林における食物連鎖網構造

*白澤大樹,(鹿児島大院・水産),木ノ下涼(鹿児島大・水産),山中寿郎(岡山大院・自然科学研究科),山本智子(鹿児島大・水産)

マングローブとは、熱帯・亜熱帯の潮間帯に生息する耐塩性の種子植物の総称であり、その群落をマングローブ林と呼ぶ。マングローブ林ではベントスが落葉を粉砕し、バクテリアなどによって底質が作られるといった、植物の破砕片が起源であるデトライタス食物連鎖が形成されていると考えられる。また、沖合のサンゴ礁由来の酸素や外洋性プランクトンが供給され、生物活動に利用されている。

鹿児島市喜入にあるマングローブ林はマングローブ群生の北限に位置し、本来ならば自生しないはずの温帯域に位置している。そのため、熱帯・亜熱帯域のマングローブ林とは異なる食物網構造を持つ可能性がある。このマングローブ林については、底生動物相(2010 林)や一次生産の季節変化(2013)が調査されているが、底生動物各種の食性はわかっていない。そこで、安定同位体比を用い生産者、一次消費者、最上位捕食者を明らかにし、北限マングローブ林の食物網構造を解明することを目的とした。

調査地内の樹皮上の付着藻、底生海藻、落葉、底質上の有機物といった一次生産とその周辺にいる生物を採取し、安定同位体比分析のサンプルとした。また、移動性の高い大型甲殻類については調査地内の落葉上や樹冠下で採取した。分析の結果、樹皮上の付着藻や落葉と底生動物のδ13C値は大きく異なっており、いずれも底生動物の餌源であるとは考えにくい。腹足類各種のδ13C値は、温帯域における底生微細藻類のδ13Cの値(-22.4~-12.8‰)(横山 2008)の範囲内にあり、このことから、底生微細藻類が腹足類の餌源である可能性が示唆された。大型甲殻類を支える食物連鎖の出発点は底質上の有機物だと思われるが、両者のδ15N値には4~6‰の差があり、間に1~2種の消費者が存在すると考えられる。


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