| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-130 (Poster presentation)
カナメモチ(Photinia glabra (Thunb.) Maxim)は,日本の暖温帯に生育する鳥散布型の常緑小高木であるが,分布は近畿地方や紀伊半島周辺,四国東部,中国地方,天草諸島に限られているとされる。一方,京都盆地周辺の二次林には広く分布し亜高木層においてよく見られる。一般に,鳥散布型の樹木は広く種子を散布させ,それが個体群の分散や維持に大きく関わっているとされるが,カナメモチはどのようになっているのだろうか?本研究では,遷移進行により上層の異なる2つの林分(遷移段階中期にあたる落葉広葉樹二次林,遷移段階後半期にあたるコジイ優占林)に設けた調査プロットにおいてカナメモチの個体群構造及び繁殖,種子散布,実生の更新を調べ,京都市近郊林における鳥散布樹木カナメモチの分散パターンや更新過程を明らかにすることを目的とした。
両林分において成木(胸高直径;DBH≧5cm)は一山型,DBH<5cmの個体は実生段階(幹長<10cm)の個体が最も多いL字型のサイズ分布を示した。萌芽率は低かった。実生の個体数は落葉広葉樹二次林の方が多かったが両林分共に3年生が最も多く5年生が続いた。実生は両林分共,土壌の基質に関わらず親木の周辺2m前後に集中して分布していた。親木から0.3m,2.0m,5.0mの位置に実生枠を設置して実生消長を調べたところ実生の発生数には親木からの距離が影響し,両林分共に親木から2.0mで有意に多く5.0mでは非常に少なかった。実生の秋期の生存には発生日のみが有意に影響していた。果実量は1年ごとの豊凶を示し,2月頃に成熟し落下後地面に達すると速やかに実生が発生することが観察されている。以上より,カナメモチでは種子発芽以降の密度依存的な影響は比較的小さく,親木の近傍に散布された果実や種子が林分の違いに関わらず発芽し,実生バンクを形成することで更新していることが示唆された。