| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PA1-131 (Poster presentation)
動物の栄養状態は、その個体の成長や繁殖のみならず個体群の存続や生態系機能を決定づける重要な要素である。例えば湖沼に生息する代表的な植食性動物プランクトンであるDaphnia(ミジンコ)の成長速度は、餌となる植物プランクトンの量や質により変化することが知られており、それに伴って二次生産や栄養塩回帰速度など生態系機能への関与も変化する。このため、動物プランクトン種の栄養状態を把握する試みが多くの研究で行われて来た。しかし、それらの多くは餌となる植物プランクトン量の把握や成長速度の間接的な推定などによるものである。一般に、動物の栄養状態は餌の同化量に依存し、餌の同化は消化プロセスに依存する。このことは、動物の餌環境の善し悪しや栄養状態の把握にあたって、餌環境に対する消化応答が重要な手がかりになることを示唆している。しかし、餌環境の変化に対する消化応答、特に消化酵素の応答に関する情報は極めて少ない。
そこで本研究では、動物の餌環境変化の指標として消化酵素活性が有効か否かを検討するため、湖沼に生息する大型のミジンコDaphnia pulicariaを用い、餌条件の変化に対する消化酵素の応答を調べた。消化酵素活性は糖、脂質、タンパク質分解において作用する5種の酵素を対象に、近年開発された分析感度の高い蛍光法を用いて定量した。実験には一定の飼育下で育てた生後6日目の個体を用い、各種の消化酵素活性について、(1) 飢餓条件での時間変化、(2)投与する餌量に対する応答、(3)必須栄養素であるリン、窒素を片方または両方欠乏した餌を与えた際の応答について調べた。今回の発表ではこれら実験から得られた結果に考察を交えて報告する。